「NHKで放送されてる『チコちゃんに叱られる!』って番組があるけど、あれのチコちゃんってどうやって作られてるの?」
このような疑問を解決いたします。
この記事を読めば、「お!CGの合成って意外に私でも出来るかも?」
という気持ちになるはずです。
■記事のテーマ
■記事の内容
- チコちゃん動画のを作る工程
- 各工程に使われるソフトも紹介
- CGは魔法じゃないと言う事実
■この記事から得られること
■記事の信頼性
私は専門学校でCG映像を勉強しおり、現在はフリーの映像屋として活動してます。過去にはゲーム会社でCGデザイナーをしていたので、CGに対してはある程度の知識と経験があります。
そんなCGデザイナーの私が、チコちゃん動画の作り方を解説していきます。
この記事は、CGworldの掲載記事
『TV番組『チコちゃんに叱られる!』メイキング>>CGと着ぐるみの融合でクルクルと表情を変える5歳児キャラクター』
を元に構成してます。
CGが良く分からない人にとっては、少し難解な記事だと思いました。
なので私がCG初心者の方にも分かるように、解説していきたいと思います。
それではいってみましょう。
チコちゃん動画の作りかた
- 収録された映像から顔の位置を探し出し、CGに置き換える準備をする
- チコちゃんの顔をCGで作る
- チコちゃんの表情を作る
- CGだと分からないように、収録した映像に馴染ませる
- 完成
前提として、チコちゃんの着ぐるみは現実世界に存在します。
全てがフルCGって事はありません。
後から頭部だけCGに置き換えてます。
ではどのようにして収録された映像に、CGで作られたチコちゃんの頭部をはめていくのか…
順番に解説していきます。
チコちゃんが収録された動画から顔の位置を探す
初めに、収録された映像から顔の位置を探し出します。
顔の位置を探しだし、CGで置き換える場所を指定します。
ちなにこの手法は『トラッキング』と呼ばれる手法になります。
【読みたい人用】トラッキングは何のソフトを使ってるのか
トラッキングにはNUKEのプラグイン『GeoTracker』を使っているそうです。
NUKEは最安でも50万円、GeoTrackerは16万円くらいするらしいです…
CGソフトは高いですね…
チコちゃん顔のをCGで作る
次はチコちゃんの顔をCGで作ります。
まず顔の着ぐるみを元に、頭部のCGデータを作ります。
CGデータは3Dスキャンと言う手法で作られてるそうです。
3Dスキャンのイメージは下のようになっております。
チコちゃんの着ぐるみを元にCGデータを作り出す
カメラを複数使うタイプか、地道にスキャンしてくか。
どっちの手法を取ってるかは、書いてませんでした。
私が思うに恐らく前者の、カメラを複数使うタイプでCGデータは作られてると思います。
チコちゃんの表情をつくる
次はチコちゃんの表情を作っていきます。
チコちゃんの表情は数パターンを作っておく
チコちゃんの表情は『笑う』や『怒る』など、いくつかのパターンが用意されてます。
この用意されたパターンを、タイミングに合わせて切り替える事で、表情を変化させます。
チコちゃんの口の動きはAIによる自動解析
チコちゃんの口の動きは、音声解析である程度作ってくれるそうです。
母音の「あ・い・う・え・お」の音を読み取り、その母音に合った口の動きを付けるそうです。
例えば「おかむら」と発音する場合、「O・AK・MU・RA」となるので、母音は「お・あ・う・あ」となるわけですね。
したがって、口の動きは「お・あ・う・あ」とすれば、チコちゃんが「おかむら」と喋ってるっぽく見えるって事です。
ちなみに最初はセリフを聞いて、手動で口の動きを付けてたそうですが、時間がかかりすぎたらしいです。
そこで社内のプログラマーに頼んで、このセリフ解析ツールを作ってもらったらしいです。
プログラマーさんが優秀すぎます(笑)
【読みたい人用】使用ツールはMAYA
表情のアニメーションは『MAYA』で作られてます。
ブレンドシェイプで表情のパターンを作り、ブレンドシェイプの影響値を内製ツールによってコントロールしてます。
チコちゃんのフェイシャルリグを見ても分かるように、眉毛と目線くらいしかリグはありません。
なので、作る人によって表情が変わる事が少ないと思われます。
クオリティを一定に保つには、持って来いの方法ですね。
CGモデルの切り替え~モーフィング~
Aの表情→Bの表情と、表情が移り変わる事をモーフィングと言います。
マイケルジャクソンの『Black Or White』のMVでも使われてる技術です。
チコちゃんのCGを実写動画に馴染ませる
最後にCGで作ったチコちゃんを、実写素材に馴染ませます。
CGで頭部を作り、それを合わせただけではまだ完成ではありません。
このCGを現実に馴染ませる工程が、CGっぽさを極限まで無くし、あたかも現実世界にチコちゃんがいるかのように見せてくれます。
チコちゃんの腕と頭部の重なりを回避する
左の画像のように、顔と腕が被ってる場合があります。
この場合は画像右のように、腕の奥に頭部が来るような処理をしなければなりません。
このように、奥行きの関係が現実世界とチグハグにならないように、修正していく必要があります。
この処理をしないと、視聴者に合成だとバレてしまいます。
ちなみにこの処理を『マスク処理』や単に『マスク』と言ったりします。
【読みたい人用】マスクはAeのプラグイン『silhouette』を活用してる
マスクはAeのプラグイン、『silhouette』を使ってるらしいです。
マスク取るのがかなり楽になるのかな?って印象です。
短時間でたくさんのマスクを切らないと!って場合は重宝するかもです。
しかし、silhouetteの価格は22万7,000円!
個人規模の開発で、日の目を見る事はないでしょう…
チコちゃんの影を入れたり色を馴染ませる
CGで作られた頭に影を落としたり、スタジオの照明に合わせた色味を加えたりして、現実世界になじませていきます。
こういった細かい作業の積み重ねが、CGと現実の境目をなくしてくれます。
まさに職人技ですね!
ここまでやってようやく、チコちゃんの完成です。
チコちゃん動画はどこの会社が作っているか
CGスーパーバイザーには、NHKアート『林 伸彦さん』
CGディレクターには、フリーのCGディレクター『中野大亮さん』
以上の2名を筆頭に、現在はNHKアートと協力会社(コントルノ)の2社で作られてます。
1チーム7人で構成され、それが3チーム。
1本の制作に2~3週間ほどかかるそうです。
意外にも少数精鋭で作られているんですね!
チコちゃん動画の作り方まとめ
- 収録された映像から顔の位置を探し出し、CGに置き換える準備をする
- チコちゃんの顔をCGで作る
- チコちゃんの表情を作る
- CGだと分からないように、収録した映像に馴染ませる
- 完成
以上がチコちゃん動画の作り方です。
これでもしチコちゃんに
「チコちゃんは、どうやって作られてるの?」と聞かれても大丈夫ですね!
ドヤ顔で言い返してやりましょう!
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